米国 10 年債利回りとドル/円の関係が変化する

次期財務長官に指名されたムニューチン氏は、19 日行われた指名承認公聴会での質疑応答で、ドルについて「ドルの強さは恐らく、短期的には米国の貿易力に悪影響をもたらした可能性はある」(Bloomberg)としながらも「重要なのは長期的な強さ、つまり長い期間にわたる強さである」(同)と発言し、強いドルが国益との米国の伝統的な政策の継続を示唆した。経常赤字国であり、海外からの投資資金によってファイナンスを行っている米国にとって「強いドルは国益」であり、次期財務長官として当然のコメントである。敢えてドル高政策を採っていくという意味ではなかろう。他方、ムニューチン氏は「中国が再び為替操作を行えば、米政府が同国を為替操作国に認定するよう勧告するか」との質問に対し、「私はそうするだろう」(同)と発言。中国の為替介入は自国通貨の買い支えであり、つまり現時点では為替操作国には当たらないはずであるが、トランプ氏、ロス次期商務長官に続き、対中強硬路線を意識させるようなやり取りであったことに相違ない。
翻って、米国 10 年債利回りとドル/円の散布図に注目すれば、両者の関係に明
確な変化が生じていることが分かる。

1 月 3 日時点と比べると、10 年債利回りが上昇(2.445%→2.475%)している一方、ドル/円は 117 円 75 銭から 114円 86 銭まで下落しており、米長期金利上昇の下でドル安高が生じている格好である。そして、この 2017 年入り以降のバランスの変化の拠り所こそが、1 月 12 日付、同 18 日付、同 19 日付の当レポート等で再三指摘した「米国の保護主義化」の懸念である。

ドル/円を考えるうえで、トランプ新政権の対日通商政策に注目が集まるなか、ここ数日トランプ新政権のスケープゴートは完全に中国となっており、「ドル安懸念は対円ではなく対人民元のもの」という点をドル/円の上昇要因と捉える向きも多い。
「人民元が対ドルで増価すれば、日本の輸出競争力が高まる」というような楽観論さえ聞こえる有様だ。

但し、生産年齢人口の伸び鈍化(減少)のなかでの過剰投資(しかも過剰債務)を抱える中国において、内需にアップサイドはないだろう。

中国政府が投資拡大を行うことは勿論可能だが、それは単にバブルを助長しているに
過ぎない。つまり、同国が「健全な形で」経済成長を行っていくためには外需拡大(維持)は不可欠であり、斯かるなかでの人民元高は中国経済を大きく陥れかねない。同国の世界経済に及ぼす影響を考えれば、人民元高はグローバルリスクオフの最大のトリガーであろう。
世界的にリスク許容度が低下すれば、調達通貨である円は買われる。インデックスで見た場合にドルもまた上昇(恐らく新興国通貨や資源国通貨が下落)する可能性も高いが、少なくとも円安は起こるまい。米国長期金利上昇のなか、19 日はダウ工業株 30 種平均が 5 日続落となったが「米国が対中強硬路線を維持すれば、米国長期金利が上昇しても円高」との見解を持ちながらトランプ新大統領の就任式および「初仕事」に注目すべきであろう。

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